「 彼女の触手は濡れている。 」/PULL.
 






皮を脱ぐと、
彼女の触手は濡れている。
「…見ないで。」
そう俯く彼女の目は、
もう既に触眼で、
照明を落とした部屋の中、
仄蒼く、
ふたつ灯っている。

しゅるり。
彼女の触手が首に巻き付き、
やわらかく、
ぼくを締め上げる。
やがて息が苦しくなる。
見開いた目から、
眼球がこぼれ落ちて、
床に転がる。
ぽっかり空いた眼窩から、
そこから、
「彼。」は這い出してくる。
ぼくは、
ふたりを床から見上げている。

「彼。」は、
その小さい手で、
ぼくの眼窩を押し広げ、
ぼくから抜け出してくる。
「彼。」にはまるで体
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