死に神/はじめ
 
機でジョージアのエメラルドマウンテンを買って寂れた公園のブランコに乗ってキィコキィコ揺り動かしていた 今度こそクビだとさっきよりあまり気にしていない様子で缶コーヒーを飲んだ彼は 煌々と輝く三日月に見える月をじっと眺めていた 妻とは離婚だなと彼はしみじみ思った 子供はできなかったが楽しい生活だったなと彼は思った 野良の秋田犬が死に神の方を向いてじっと立っていた お前は一体何を見ているんだと死に神は思った ブランコが独りでに動いているのを不思議に思っているのだろう ワン公お前はなんて可愛い奴なんだ と彼は何故か瞳を潤ませていた ブランコを降りて秋田犬の頭を撫でて空に浮かび 鎌を枕にして夜が明けるのを待った 夜が明けると会社に行って辞表を出して家に帰って妻の離婚届に判子を押した 雲の上で昼寝をした後 大都会の空へ降りた そして今日も救急車のサイレンに合わせてリズミカルに踊り暮れた
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