この家とあの病院とそこにある図書館と/土田
 
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朝ゴルジ体を食べ
細胞からケーブルを引きずり出し
視覚からネットワークへと接続する
角膜と水晶体と網膜を
ヤニくさい玄関に放つ
わたしの感情の起伏は
たばこの火柱に似ている
数時間まえもどこかで
吸殻が死んでいるのだ
傘立てのへりの
置きかけのたばこを
深い深い灰皿へ押しつけ
玄関を出た
事実はいつもそこにある

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ロングピース通り
たった二十本の
平和の木が植えてある
商店街の中ほどで
ゴミ袋に捨てた
吸い殻が気になる
いつもわたしの最悪は
パターン化されている
散らかった無人の部屋
一週間前に焦げて穴が開いた
カーペットを思い出し

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