無教養だすゲまいね虫/人間
【1】
器質性勃起不全を患った男と、深達性弐度熱傷を負った女が、滝の渓谷で向かい合わせ。
その間に、
煙草の空き箱で作った小さな傘。
その下に、
小さな山椒魚が串刺しにされている。
山椒魚は考えた。
<雪が消えててさ。けだし春だわーて思って出てきたらこの有様。遣り切れんよ全く。>
男は黙って枯れ木を焼べる。
(山椒魚は生命力が強く、体を半分に裂いても生きている事から別名ハンザキとも呼ばれる)
女は燻りに目を釘付ている。
(古来より“淫魔の魚”と呼ばれ、人間を色情狂にする魔物であるとも言い伝えられている)
薄い煙が山椒魚を包み始める。
(黒焼きや燻製は
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