死に際/ゆうさく
初夏の夕焼ブルー
窓から見えるのは
憂鬱色に染め上がった
人の群れ
病室はうなり続ける
おーんおん
咲き誇る雨の花火
パチパチと
たたきつけられ
消えてゆき 雪のよう
すばらしき儚き世界と
おじいちゃんの死に際
病室はうなり続ける
おーんおん
思い出す、
おじいちゃんと
いつか蜜柑を食べた
しわくちゃな笑顔
カンロあめの香り
口の中
得意げに転がし
溶けていった
と
おじいちゃんの死に際
いつか溶けてゆく
カンロあめと雪とおじいちゃん
病室の前で僕は立ちすくみ
思い出と一緒に
カンロあめと雪とおじいちゃんを
口で転がしている
周りの気遣い
哀れみの瞳
おじいちゃんの
寂しそうな背中に
ばかでかい針が突き抜けて
茜空へと続いている
これが
死に際なのだろうと思った
カンロあめ
ゆっくり溶けて
逝(ゆ)きました
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