自転車ロボット/楢山孝介
 
歩く日の方が多かった
中学生にもなるとなんだか恥ずかしくなったので
自転車ロボットは物置に仕舞い込んで
変形しない新しい自転車を買ってもらった
寂しい日も少なくなっていた
新しい友達は猫に驚いたり
自転車を追いかけたりしなかった

それから幾年かが過ぎた頃
すっかり忘れていた自転車ロボットを
物置の整理中に見つけた
サドルの裏のボタンを押してみると
久し振りにロボットに変形しようと無理をして
ガタガタと ミシミシと
キシキシと カラカラと音を立てた
だけどロボットにはなれないで
部品を飛び散らせて壊れてしまった
飛び散ってもなおカタカタキシキシうるさかったが
相変わらず何を言っているのかわからなかった

伝わらないだろうと思いつつ
「さようなら、ありがとう」と言ってみると
自転車ロボットの飛び散った部品たちはそれっきり
うんともすんとも言わなくなった
戻る   Point(4)