案山子の観る風景/朝原 凪人
吹き抜ける風の熱は次第に柔らかくなり
土の色を覆う緑が少し彩度を落とします
光と土と緑とがない混ぜになった薫りが鳥たちを誘い
雀が僕の両肩に乗って
楽しくお話をするものですから
右耳と左耳とどちらの話を聞こうか
頭がこんがらがって眼が丸くなります
「この役立たず」
何人かの男の子が
石を投げつけてきました
僕は雀と仲良くしたいだけなのですが
思わず口が不機嫌に歪んでしまいます
雀もどこかへ飛び去って
額に汗かいて頑張ってます
雨の日も風の日も笠を被って
のんきな顔で突っ立っているだけなんて
とても心外です
後姿しか知らない仲間たちも
ひとりぼっちでうなだれているじゃありませんか
(長い影が並ぶ
十字の墓標に磔にされた)
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