ふたつの曳航/前田ふむふむ
 
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ひかりは、不思議な佇まいをしている。
向かい合うと、わたしを拒絶して、
鮮血のにおいを焚いて、
茨のような白い闇にいざなう。
反対に、背を向ければ、向けるほど、
やわらかい静寂を、萌えたたせてくれる。
水彩画のようにみえる場所で、美しい衣装を、
尚、華やかせて、
わたしの、記憶を束ねた冬の荒野に、
澄んだみずを走らせている。
その音色に浸りながら、子供のように眠りたい。

それでも、背中を突き刺すような痛みは、――
どうして、消せないのだろう。
たぶん、わたしが受け止めねばならない、
積み上げた、あるいは、
捨てつづけたものの視線かも知れない
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