砂浜に絵を描く(マリーノ超特急)/角田寿星
酒がキレた俺とアンちゃんは
「大きな砂浜のある」駅にあてもなく降りる
行商のオッさんはしゃべり好きで
列車の走るあいだ ずっと
ハマグリが夢をみる話とか
食べられる星を手に入れた話とか
たらふく聞かされてふたりとも悪酔いして
実際のとこ酒なんかどうでもいい
誰かオッさんのしゃべりをとめてくれ
逃げるように下車すると案の定オッさんも降りてきて
ながいながい挨拶をさんざ繰り返して
別れた
砂浜をわざと肩をいからせて歩く
俺とアンちゃんは
相槌をうつだけでアゴがはずれそうになってた
手入れの悪い義肢があるくたびにみしみし音をたてて
冗談じゃねえ
アンちゃんが呆け
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