たまねぎ/なまねこ
 
僕の部屋の窓から焼却炉が見える
団地住宅に併設された
小さな灰色の炉は
押しつぶされたたまねぎみたいに見える
僕の部屋の窓には
すこし不恰好な焼却炉がいる

ひび割れそうにかわいた夜
窓の中の炉は一度だけ僕に
わがままを聞いてくれないかと
少年のような声で言った
マッチが欲しいんだと
炉は続けた
僕は泣き出しそうになってしまった

僕の部屋にはマッチがない
バーナーもランプもない
いつか恋人にもらった
銀色のライターがあった
僕はそのライターを
ジャケットのポケットに入れて
炉のところまで歩いていった

僕が隣に
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