遠方の死/楢山孝介
い仲間に
電話でKさんの死を報せてまわっている
四方山(よもやま)話に発展して笑い声も聞こえてきたりする
驚きの方が強くて
悲しみ方がよく分からないようでもある
昔のアルバムなど持ち出してきて
Kさんや父や母の
在りし日の姿を僕に見せてきたりする
髪を伸ばしていた頃の腹の出ていない父がいる
仲間内で一番背の高い母がいる
Kさんはこれだと父は指差すが
次の瞬間にはもう僕には見分けがつかなくなってしまう
Kさんの声を思い出す
数年前、家に電話がかかってきた時
受話器を取った僕を父だと勘違いして
すぐに用件を話し始めた
違います息子ですと言うと
「声似とるなあ」と驚いていた
そんなKさんの声は
もう二度と聞くことが出来ない
そんなことくらいしか実感出来ないでいる
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