導く、声/ユキムラ
先刻から、あたくしの周りだけが酷く煩いのです。
辺りには誰も居る筈のない廃墟。
季節はもう冬。刻は午前三時だと云うのに・・・
誰かが耳許で囁くのです。
此処へ来てはいけない。踏み入っては危険だ、と。
それでもあたくしは足を止めようとはしません。
いいえ、止まれないのです。
今 若しも進むのを止めてしまえば、折角此処まで来た意味が無くなってしまうから。
あたくしは首に巻いてあった包帯を外し、
すると其処から血が流れてきます。
赤い・・・赤?
いいえ。
赤い筈もないあたくしの血は闇でした。
漆黒の闇の色。
あたくしは口許に微笑を浮かべ、
廃墟と成った其の建物の奥へと、入ってゆきました。
−−−永遠の世界を、手に入れる為に−−−
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