life/小川 葉
 


まあ こんなんでも 悪かねえ
これこそ 俺が 夢に見てきた
世界というもの なのかも知れぬ

などと 開き直った 彼は
ずっと 憧れてきた 太陽より
むしろ 月のことが
大好きに なった

星たちの ひやかしも 気にならず
新月 三日月 半月 満月
月は じつに 気まぐれで
素直で
いさぎよく 自由
爽やか かつ
鮮やかで
気持ちが 晴れ晴れするほど
見事に
あっけらかんとしていて
その 強さ

ただただ 人間的だと 思った

彼が はじめて地上に到達し それから
人間になって 生きてゆくためには
そんな 月こそが お手本となった

新月は 悲哀ではなく
満月は 充実ではなく

彼は そのように 現実というものを
受け入れたのである

すべては もう
はじまっている
新しく せっかちに
はじまっている

夢は
太陽の 輝き続ける
ままに しておけ!
戻る   Point(1)