life/小川 葉
彼は とても深い 土の中にいた
どちらが 上か下か 右か左か
わからず 長いこと 過ごした
熱 を 感じた ある日
それが すべてを 決定した
確信した 意思のまま
夢中で その方向へ 掘り進んだ
そうして やっと 地上に出たとき
そのときこそ まばゆいばかりの 太陽が
あらわれる はず だった が
皮肉にも
地上は そのとき 真夜中だった
救いと言えば 月が 出ていた
よりによって 新月 であった
土の中と 同じく ほとんど 地上は 真っ暗で
ただ ぼんやり 輝く 無数の星たちが
新入りの彼を ひやかし 歓迎してくれた
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