月に請うのに/ヴィリウ
どっちだったろうね
生まれても生きなかった御前と
生まれる事さえ許されなかったあの子
一体どっちが憐れで
此の世の地獄を見た御前と
此の世の希望を知らずに逝ったあの子
わたしにはどちらも可哀相
御前の名前は忘れ果て
あの子の名前も付けそびれた
わたしが一番悪党かもね
ねえ、おまえ。
おまえさま。
月は満ちて居たよ
あの時も
今だって
わたしは狂おしい思いで請うて居た
どうかこのまま
仕合わせなまま
命を繫いでゆけますようにと
今も夢に見る
あの頃が懐かしいね
ねえ、おまえ。
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