月に請うのに/ヴィリウ
ねえ、おまえ。
おまえさま。
なんて
お女郎みたいな呼び方をして悪かったね
怒らないで こっちを向いてお呉れ
ねえどうか
機嫌を直してお呉れな
ねえ、おまえ
あの子はどれ程怖かっただろうね?
只の一度も日の光を見る事なく
縋るものも無く
たったひとりで
あの川を 渡って往かなきゃならないなんて
後姿が 見えるようだったよ
おまえの腹が
真っ平らになった時
嗚呼なんて 可哀相な子
ねえ御前。
御前様。
もう名前は忘れっちまったよ
御前様。
そう呼んで お女郎よろしく可愛がった頃が懐かしいね
ねえ
ど
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