月に請うのに/ヴィリウ
 


ねえ、おまえ。
おまえさま。

なんて
お女郎みたいな呼び方をして悪かったね
怒らないで こっちを向いてお呉れ
ねえどうか
機嫌を直してお呉れな



ねえ、おまえ
あの子はどれ程怖かっただろうね?

只の一度も日の光を見る事なく
縋るものも無く
たったひとりで
あの川を 渡って往かなきゃならないなんて
後姿が 見えるようだったよ
おまえの腹が
真っ平らになった時

嗚呼なんて 可哀相な子




ねえ御前。
御前様。

もう名前は忘れっちまったよ
御前様。
そう呼んで お女郎よろしく可愛がった頃が懐かしいね

ねえ

[次のページ]
戻る   Point(2)