ある昼のバグダッドの町家にて/I.Yamaguchi
爪を押し上げ肉に潜り、
毛穴を探って血脈にただ一筋たらしこむ。
静脈弁にせきとめられぬよう青黒い血に混じりつ、
手相をなぞる舌先にしたがい、
体の内から君の命数をはかる僕の唾は、
キスミントをかまなかったせいかトマトのぬめりをまだ残す。
湿り気を皮膚に置く舌は点々としか君をたどれないが
水気に囲まれた唾は貪欲に老廃物を粘りで吸う。
汚れを吸われた血液は再び酸素を求め、
皮膚を栓する水は熱と垢を集めて溢れ出た。
褐色の肌を振る君は今や骨まで赤く染まり、
止まらぬ腰を伝う汗は黒砂糖の甘みを帯びる。
自ら開いた穴を再び締めなおしたとき、
精液を伸ばして白粉を練り、
厚
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