創書日和「風」/虹村 凌
単純にやってこうとすればするほどに
鏡に映る己の姿は醜く歪んでいく
「お前は誰だ?どういう事だ?」
ホロホロホォロロ
砕け散る鏡の中で
億千万のけものが嗤う
行ってきたよ好きな所へ
全部思い通りになんてなりゃしなかった
啼けど呼べど向こうから
声が帰ってきた事なんて無い
疲れて家に帰ってきたって
黄色いハンカチ何て見た事が無い
くわえた煙草の先から
揺れる真っ赤な蜃気楼
金曜の夜に遠くへ消えた
流れ流れて
故郷の岸から遠く彼方へ
風のまにまに光の射す方へ
洗面器に沈んだけものの笑い声が
遠く聞こえなくなるまで
何度でも行くよ
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