アパアト/仲本いすら
何もしていないと訴えた僕らに
今の流れ星が当たろうとしている
窓を開けてみたところで部屋の隅に固まる
数億の理想は
軽く身震いをしたあと
愛を囁くばかりで
触つてみても
あの日の君ほどの感触は
無かつた。
どんなものに為りたいだなんて
三年前の手紙には
きつぱりと書いてあつたはずなのに
僕の唇(くち)からは
しようのない定数と
三角定規の欠片しか
出てこないから
困つたものだ
(すそよ、さよすよう)
まだ見ぬアンデルセンの
あの
あのような
とてつもない眩しいにおいを
いつの日にか
最期のものにしていて
僕は今もかのアパアトで
息を二回ほど吐いてしまつている。
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