曼陀羅寺へ/たかぼ
 
曼陀羅寺へは湖沼の脇のあぜ道を
通って行かねばならない 丈の低
い湿原植物の群生が道を覆い隠す
ように拡がっている 湖沼にはぼ
んやりと霧が立ちこめ向こう岸は
見えない 風はなく水面はほとん
ど動かない 誰もいないあぜ道を
ただ与えられた義務を遂行するよ
うにたんたんと歩く 湖沼を左手
に見ながら進んでいるその道は少
し左の方に曲がっている 一つの
疑問は何故自分は曼陀羅寺へ向か
っているのかという点だ しかし
人というものはしばしば自分の行
動の説明ができないのではないか

かなり歩いたところで私はもう一
つの疑問を持つに至った 曼陀羅
寺はどこにあるのか そ
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