レイン/チグトセ
レイン
あのとき足音にかき消され
君の言葉が聞こえなかった
雨が降る
自由が再び吸い込まれていく
星が湿度を復元する
束の間の動作
長旅を終え
地面に歪んでは消える
気ままに遠くへ行きたがっては
海から千切れて宇宙の浜で遊び
宇宙の褐色に似たかった雨が今
引力に迎えられて家に帰っていく
レイン
「ただいま」の声が賑やかで
僕は君の言葉を聞き逃してしまった
きっとどうでもいい言葉だった
でもそれが気になって
どうしても今、目を逸らせない
雨が降る
あの冬君と喉を潤した緑茶の湯気が
親密に雲に入り、雲になり
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