行くあてのない列車に乗って/村木正成
車窓がくもって何者かが問いかける
移民の悲しみ似た淡くはかないものだ
いくつかの希望を抱いて死んでいった
若者の中の一つの宇宙だ
車窓がくもって見えていたものが歪む
ひときれのパンに空いた穴のようなものだ
時間の中に溶け込もうとして消えた
科学者のため息だ
何気ない日常が
ひとつ壊れただけでも
ぼくらの世界はたちまち無くなる
朝日が二度と昇らないなんて
誰がしんじる?
車窓の中にある風景は
いったいだれが創ったのか
車窓がくもってあらゆる意識がすれちがう
地球儀の裏側にある太陽みたいなものだ
二重の嘘を身にまとった
政治家の安息だ
何気ない日常が
ひとつ壊れただけでも
ぼくらの世界はたちまち消えさる
夕焼けが二度と沈まないなんて
誰が信じる?
車窓の外にある風景は
いったいだれが認めたのか
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