砂の城/はな 
 

宇宙はひろがり続けているらしいけれども、窓の外は割合に静かで、ごうごう鳴ったりしないので、せめてそっと太陽系の裾を握っている。それがいちばんいい、と思う。あなたはリクルートスーツの特集の頁をめくりながら「これだったら?」と一度ひろげて、「うーん」とか言っている。あたまがぼさぼさで、実験に失敗した人のようになっていて、わたしのとなりはまだ少し温かかった。





水を抱いて
ホームをすべりだす電車の
透き通った尾をひいてゆく すがたを
他人事のように 
ぽつりと 見ている
ちいさな波にも攫われてしまう日々に
きづいてゆくものは
やっぱりとても
他人事なくらいにちいさいのだろう


水の跡を追ったさきに
海は
たたえられているのか
まだ 知らないので




*





一羽の鳥が窓辺にとまった。こども用靴下をくわえていて、それを見つけたあなたは、何故かとても嬉しそうだった。



陸路をゆく
ふくらみもへこみも
やわらかな一本の鎖のように


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