砂の城/はな 
 



春がじかん切れとなり
贅沢な地下鉄のゆれにまかせて
それぞれ 肩から鳥を逃してゆく
そらにまいあがれ、ちぎれないままで 
そらを

みじゅくな鳥が
春の隅っこを
ゆっくりとゆく 晴天 
もうずっと前から飽きている
そんな
すずやかなものに乗る午後


水を 抱いて






*






寝ているわたしの眉間に四季報が優しく落ちてきた。分厚い本のおもみで目が覚めたが、目が開かないくらいに重たい本なので息がくるしいのだった。あなたの背中が笑っている。ボーダーのうすい水色のシャツが笑っている。耳の外側で、咲き乱れては、散って、

[次のページ]
戻る   Point(29)