砂の城/はな
春がじかん切れとなり
贅沢な地下鉄のゆれにまかせて
それぞれ 肩から鳥を逃してゆく
そらにまいあがれ、ちぎれないままで
そらを
みじゅくな鳥が
春の隅っこを
ゆっくりとゆく 晴天
もうずっと前から飽きている
そんな
すずやかなものに乗る午後
水を 抱いて
*
寝ているわたしの眉間に四季報が優しく落ちてきた。分厚い本のおもみで目が覚めたが、目が開かないくらいに重たい本なので息がくるしいのだった。あなたの背中が笑っている。ボーダーのうすい水色のシャツが笑っている。耳の外側で、咲き乱れては、散って、
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