静かな氾濫をこえて?四つの断章 デッサン/前田ふむふむ
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逆光の眼に飛んでくる鳥を、
白い壁のなかに閉じ込めて、
朝食は、きょうも新しい家族を創造した。
晴れた日は、穏やかな口元をしているので、
なみなみと注がれた貯水池を、
空一杯に広げている。
流れる眼差しを追いかけて、
わたしは、カレンダーに横たわる遊歩道を歩く。
見慣れた紫陽花のうえで、
ひとりの女性の生い立ちを絞殺しながら、
やさしい言葉は、空を飛ぶこともあるのだと、
独り言を飲みこんで、
その香りあがる手土産を、母に自慢げに話した。
少しやつれた母は、わたしのために、一人の青年を
碧い海に旅出させた、美しい船の話をしたが、
このひかりを
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