水中マンホール/零椅
何の前触れもなく
唐突に
涙腺が緩み始めた
止めどなく溢れ出てくる様子は
雨の日のマンホールのようで
なんだか笑いそうになってしまったけれど
それでも
引きつらせてしか笑えなかった
何か悪いことをしたでしょうか
心に穴があいたのではなく
不思議と広がる虚無感
ああこれは何もない
決して満足しているわけじゃない
けれども
それなりに楽しい毎日で
虚しいといえるほど薄くはない
なのに
なんで
眼からは
零雨のように出ているのに
溜まっていく
マンホールから溢れ出る水と
意味もなく流れるこれは
比べるまでもなく
意地でもなんでもない
ただ純粋な気持ち
拭ってなんかやるものか
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