鉛の花/フユナ
 
言葉が僕たちを汚さなくなって
久しい
お悔やみに
少し遅い桜の木の下に
鉛の文字を埋めてみた


泥が手にはね
鉛の文字は
薄荷棒のように冷たい
桜は八重だったと見え
あれよあれよと
新鮮な
兎の内臓色の花を咲かせた


小さい頃にのぞいた
スカートの中身にもそれは
似て
僕は少しとまどうと
内臓の花はふわふわの
白い綿毛を身にまとい
あれよあれよと
兎になって
しほうはっぽう駆けてった
兎の内臓色なのだから
兎になって当然なのだが


ああ
咬みにいったんだなあ
と僕は思う
鉛の文字が咲かせた花は
たしかな重量と
温度を持って
どこかの
八重花のような内臓に
白く清潔な歯を突き立てに
僕たちを
汚しに












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