無へ/狗の骨
 
暗い闇の中

鈴の音が聞こえる

不思議と怖くはない

そもそも恐怖ってなんだろう

さらにいうと

私はどうしてここにいるんだろう

そもそも「私」とはどの私を指すの

ここは暗い

でも私の目が開いている確証さえない

もしかしたら「ここ」ではないどこかなのかもしれない

耳は動いている

鈴の音が聞こえたから

また聞こえた

どうして私は始まったの

そして どうすれば私は帰結するの

わからない

鈴の音が継続的に聞こえてきた

段々近づいてる

だめ、来てはだめ

ここはだめ

ここではないどこかへ

道があるなら

そう強く思うと

鈴の音はそこで途絶えた

その瞬間に

無音の世界が降り立って

私は

私ではなくなった
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