椎/佐々宝砂
 
まだぎらつきはしないけれど
充分に
強烈な熱を発散しはじめている
五月の太陽

日暮れがきて
それはすこしだけかげりはじめて
万緑は
急速に輝きを失ってゆく

気温が下がる
夜の虫が肌にまつわる
蝙蝠が飛ぶ

けれど椎の若葉だけは
あかるく映える
まだそこだけ昼のさなかであるように

(未完詩集「百緑譜」より。「雑木山」改題)
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