太陽と沈黙/村木正成
研ぎ澄まされたナイフで空を
切り裂いた太陽は
六十億もの穴の空いた
大地にやがて沈んでゆく
プラタナスの葉に覆い被さるように
牧羊神の与えた息吹が
薄いガーゼとなって絡まる
初夏の森を中心に
黄に青を混ぜた光が
波紋状に拡がってゆく
空色のクッションは隅々をつつき
やがて膨らんでゆく
―放浪の外套の裾は煙であった
虹色のトカゲは心の中に潜み
深く潜ってゆく
―胎芽は夜のものではなかった
空からしたたる葡萄酒に
傾いた太陽は
午後の沈黙の空に
染まらずに漂うばかり
白銀のみずうみに降り注ぐように
女神シベールの微笑みは
深い混沌として満たされる
夏蝶の紫の鱗粉で
沈黙の大地の震動は
空に大いなる一撃を与える
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