キャンバス/
村木正成
病院の最上階の病室の
眠れぬ夜に少年は
夢で作った絵具で
誰も知らない絵を描く
空は大きなキャンバスだ
ひとりでさびしい少年は
空にたくさんの友達を描きました
父親を知らない少年は
空に大きな父親を描きました
自由に飛びたい少年は
空に立派な翼を描きました
ふと夜空を見たときに
いつもより星が瞬き
いつもより月が冴え冴えと
いつもより雲が澄んで見えたら
それは眠れぬ少年の
つかの間の悲しい遊戯です
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