オニキス/チグトセ
の玄関を開けなきゃならない
ねえ たとえば
あなたと並んで
歩道橋の階段をのぼっていったとき とか
それだけのもの それそのものが
むしょうに うれしくなってしまった とかそんな
内容を忘れてしまったあったかい夢のような
内容を忘れてしまった優しい詩のような
実はこの街中にひっそりつながった琴線から
ふいに届く感情をはかるすべや
価値を与えるものさしを知らないから
そんなもの手元にないから
余計にオロオロ迷ってしまうんだ
余計に切なくなってしまうんだ なんて
きっと魂が当たるから切ないんだ
こんなに切ないってのに
あまつさえその内容がよくわかんないっ
[次のページ]
戻る 編 削 Point(12)