オニキス/チグトセ
 
の玄関を開けなきゃならない

ねえ たとえば
あなたと並んで
歩道橋の階段をのぼっていったとき とか
それだけのもの それそのものが
むしょうに うれしくなってしまった とかそんな

内容を忘れてしまったあったかい夢のような
内容を忘れてしまった優しい詩のような
実はこの街中にひっそりつながった琴線から
ふいに届く感情をはかるすべや
価値を与えるものさしを知らないから
そんなもの手元にないから
余計にオロオロ迷ってしまうんだ
余計に切なくなってしまうんだ なんて

きっと魂が当たるから切ないんだ

こんなに切ないってのに
あまつさえその内容がよくわかんないっ
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