雨の知らせ/朝原 凪人
手を赤く染める雨を一粒。
摘んで捕まえた。
つぶしてしまわないようにそうっと。
空に泳ぐ寸前の雫の形のまま。
目の前にぶら下げる。
「こんにちは」
(こんにちは)
鈴が、鳴った。
柔らかく奏でられる旋律のように。
雨はその内側で世界を躍らせながら答えた。
「空が泣いているのかい?」
(いいえ)
黄色い傘を差した女の子が空を踏みしめて歩いている。
(空は泣いていませんよ)
「そう。君は空の涙ではないんだね」
(人間は面白いことを考えるのですね)
路上に止められた車がぐにゃりと曲がっ
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