幾つもの星が流れた朝/板谷みきょう
 
娘は気付くのが遅かった 医者は手遅れを家族に告げた
その日が長い闘病生活の幕開け
時を置いて たくさんの人 励ましを冗談交じりに笑いながら
付き添った父も母も明るく 笑顔交わしていたが
彼女は日増しに痩せ細り 頬はこけ
歩けなくなり 立てなくなり 寝たきりとなった

天井ばかりを見上げる事を思い 病院はベッドを窓際に移した
命と引き替えの痛み止め 頻繁に打ち続けても
父親は娘に笑顔で これからの話をしていた
それはあり得ないこれからの話なのに 笑いながら
彼女は痛みを訴え続けた
笑いを忘れ 息を引き取る間際まで

彼女が意識を失くした時 父親は彼女の前で初めて泣いた

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