ある電話/I.Yamaguchi
バイトの帰りによったラーメン屋で店員の話を盗み聞きしていた。いつも北京語で話している彼らが、その日に限っては日本語で話していたのだ。二人いるヒラの一人と、店長らしき中年の男、オーナーと呼ばれる男の三人で、鍋のサビについて話していた。正しくはオーナーが、鍋にうすく油を塗るとサビができにくくなる、と言ったのを聞いただけだった。この店は店長とオーナー以外ほとんど日本語を話せないはずだった。店長が店員の話を日本語に訳していたことに気づいたのは、店長がオーナーに、店員の故郷では鍋に油を塗らないそうだ、と伝えたからだった。
家に帰ると、カレーが鍋に一杯分残っていた。翌朝ゆで卵をのせて食べ、鍋を洗った。珍
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