おにぎり/土田
お姉ちゃんが、ぼくを動物園に連れて行ってくれた
はじめて見た白くまはなんだか死んでいるようだった
お昼、お姉ちゃんのおにぎりを食べて
缶ジュースをふたりではんぶんこした
帰るとき、カンガルーの檻のまえでお急に姉ちゃんが
おなかが痛いって言って
トイレに駆け込んでいった
おしっこにしては長くて
うんこにしては短かった
帰りの電車のなかでお姉ちゃんが
カンガルーのおなかのなかに入ってみたいよねって
ひとり言のように言って
ぼくは眠たかったからただうなずいて
お姉ちゃんの肩に頭をうずめて眠った
電車をおりたあと
ぎゅってお姉ちゃんの握る手が強くて
お姉ちゃん痛いよって言ったら
お姉ちゃんの顔がオレンジ色にしわくちゃになっていた
ぼくはなんだかいけないことをしたような気がして
アパートに帰ったあとはじめてぼくが晩御飯をつくったみた
ようやく出来たとびっきりでっかいおにぎりに
お姉ちゃんの顔がまたしわくちゃになって
ぼくもつられてしわくちゃになって
そのあとふたりしてしわくちゃのまま
ぼくのちいさな布団でふたりして丸まって眠った
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