刹那/朱雀
 
書眉鳥(ほおじろ) 囀る春景色

支那(チャイナ)生まれの丹桂(注:金木犀)が

此処に居(お)るよと言いたげに

風に嫩葉(わくらば)揺り落とす


今はただ慎ましやかに影潜め

やがては巡る秋を待つ


思い馳せれば甦る

噎せ返るほどの芳しさ

忘れ去られた葉桜も

ひと月前には花霞


移ろう時の間隙(かんげき)に 

何かを忘れていないかと

愁えの雲に 春の情(なさけ)も色褪せて

心許ない花逍遥


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