誰も本当の私を知らない/夕凪ここあ
くぐる
くぐもる
声にもならない
ずっと夢見ていたら今朝
魚になってしまっていた一番の引き潮
うろこがくすぐったい
尾びれが不慣れで痛い
肺呼吸が懐かしい
それよりも
水平の向こうまで泳いでいたい
もぐる
そまる
哀しいことがあっても涙より
潮っぽいもので満たされる
泡が生まれてく
泡が生まれてく
綺麗だね
哀しみだって
このまま
水平の向こうの向こうまで
泳ぎきってしまえ
誰も本当の私を知らない
そんな哀しみ捨ててしまえ
くぐもりながらだって
泡
泡
追いかけて
弾ける夢
先にまた
泡があって
さ
もう満潮になるころ
やっと覚え始めた魚の呼吸
まだ見たことのない水平線が
いびつだったとしても
いいよ
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