意識と蟻/潔
まだ緑の多い都会気取りの田舎町で行われた祭り。たこ焼き屋やわたあめ、金魚すくいなどの店やフリーマーケット、数箇所のステージなどが大きな池をぐるりと囲んで設けられた。燦々と降りしきる日光。うだうだ歩く人の群れ。
その中で僕は後輩が出演する屋外ライヴを観ていた。頭にガンガン鳴り響く音。いかにも若い甘酸っぱさが広がる。そして青臭い。それが心地よく体を流れたかと思いきや、僕の思考回路は唸る様に歪んでいった。黒と白と蛍光色が渦になって、靄になって、頭蓋骨の中で揺らめいている。それは煙草でも酒でもごまかされることなく、数秒の間に以前の習慣であったリストカットが脳裏をよぎった。唇が痺れ、手が若干震える。僕
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