あいうえお短歌/山中 烏流
 



朝焼けに 彩り添える 歌でさえ 笑顔の先に 思い出せると


翳した手 傷は癒えぬと 繰り返し 欠乏の果て 声は枯れゆく


さざ波の 白々しくも 酸い音を 瀬に背に受けて 空を抱き止め


端的に 縮めた声は 連なって 天の彼方に 遠く消えゆく


夏色の 憎らしき頬 ぬかるんで 寝癖のついた 喉笛にキス


蜂蜜と 秘密を交わす ふしだらを 塀の後ろに 放り出す夜


枕木と 短き梅雨を 蝕んで 迷路に嵌まる 戻らず消える


約束は 何処の空に 揺らめいて 縁が香る 夜明けの美空


螺旋状 輪廻はまさに 累積し 恋慕の果てに 六時が告げる


忘れない いつまでもこの 美しき 笑顔とともに 歌った君を





ん、おしまい。
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