夜ヲ泳グ。/紅魚
【序幕:東ヘ向カウ】
呼ばれた気がしたから
振り返る、
ソラミミ。
カイヅカイブキのうねるような影に怯えて、
足が竦んでしまったのです。
バスの接近知らせるランプが、
少女を酷く不安にする橙色の点滅で急かすから、
彼女は、
揺られる眠りを諦めてしまった。
東向き、
ふらりのお散歩。
背中の空が紅い、なら、
振り返ったかも知れない。
助けて、
と、
呟けたかも、知れない。
けれど刻限は、手遅れ。
いくら睨んだところで、
烏は隠れてしまった。
【第一幕:星ヲ呼ブ】
青い、青い、
星座の夜です。
水瓶の少年。
あふれる水に魚は泳ぎ、
魚尾の山羊
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