明日に最も近い夢/玉兎
 
 私の家には、かあさまととうさまと私の妹が住んでいた。

かあさまのゆりかごはいつもの窓辺でゆれていた。
その窓辺からは心地よい風だけがかあさまに吹いた。
ゆりかごに座ったかあさまは、瞳を閉じたままじっとてしていた。
かあさまに吹く風と草のせせらぎ、静かにゆれるゆりかごのきしみ。
全てが調和を保ち完全な世界を作りだしていた。
そんなかあさまを見てとうさまはよく言ったものだった。
「女性は全ての生を育み、全ての生の死に近いものだ」と。
だけどかあさまは死んでしまったのだととうさまは言う。
本当の意味でかあさまは死んでしまっているのだと。
暖かな日の光は、かあさまの影を時に長くし
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