幸福の廃墟/渦巻二三五
門(かど)ごとにあふるる花を競ひ合ふ住宅街を光貫く
やはらかき茎裂けながら薔薇の芽のあたらしき肉色に生い出(い)づ
腐りつつ笑ふ黄の花雨受けてプラスチツクの鉢膨張す
恨まれてゐるかもしれず何色に咲くかわからぬ薔薇の芽の萌ゆ
王のゐることはあるいは安らけしいつか廃墟とならむ宮殿
一国をなしたるがごと薔薇の木の茂りゆたかに蕾ふふみぬ
グラジオラス!滅びし王の名のごとく呼べばくるしき夏の野心よ
陽に焼けし王子かなしく微笑みてけふは王子のやうに手をふる
ふさわしき花咲き出(い)でむ永久(とわ)の留守風と鳥とが種子をはこびて
一九九九年五月五日 現代詩フォーラム@nifty
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