ワンルーム/野島せりか
 
冷蔵庫のモーターの音だけ響く部屋で
ベッドに横たわると
たった一人の自分の呼吸さえも
聞こえなくなる

こんな夜は毛布に蹲るしかない
枕と頬の間に絡まる髪をかきあげ
コットンの感触を確かめると
今日の昼のにおいがおした

何か話したいと思うたびに
言いたい事から
どんどんかけ離れて行くようだ
読まない本はただ積まれていく
冷蔵庫のモーターの音だけが響く部屋で
こういうものなんだよと言い聞かせてみる
ジクジクする口内炎の痛みを舌で気にしながら
一人完結していけばいいよ

冷蔵庫のモーターの音が止まった瞬間
自分の首をしめつけられたように
苦しくなって
そのまま一人静かに眠ってしまえばいい
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