愛/楢山孝介
愛する者を守るため
愛さない者を傷つける
思い入れのある愛にのめり込むため
初対面の愛にはそっぽを向く
愛なんて知ったことかと眼を背けると
背後にも広がっている愛に眼を潰される
愛に裏切られたと嘆く男
愛は裏切らないと力説する女
裏切った覚えも
裏切らなかった覚えもないので戸惑う愛
空から大量に愛がばらまかれても
人々は気付けず、畑のキャベツばかりが大きく育つ
地面から愛がぽこぽこ生えてきても
大人たちはゴミとして片付け
子供たちは蹴飛ばして台無しにしてしまう
それでも愛は滅びることなく
世界にあまねく行き渡る
大きなお世話だ
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