うた/チグトセ
ただ、空ばかりが暗い
照明ばかりが明るい
そこだけ白くて
他は黒い
朝、目を覚ますたびに泣いた、と君は言った
僕はその言葉を重んじてうなずいた
ベンチにはゴミが溜まっていて
僕たちは座るのを避けた
閑散とした駅前広場は
どこか威圧的な匂い
海岸公園へとくだった
静かな風を浴びて
君は落ち着いた
静かな
うたをうたう
君の声の調子に合わせて
同じ旋律で
同じ抑揚で
同じメロディーで
不安から、覗きこんだ哀しみの中身
そこには君がうずくまっていた
また続きをうたいながら
せめて
君のあったかな日溜まりに
メロディーが流れていればいいのにと思い
うたをうたう
戻る 編 削 Point(9)