海沿いのまち なみ/水町綜助
 
今歩いているこの路地が
たとえば海沿いにしかれたひそかな町の
その奥に抱かれた狭い路地だったとして

世界一小さいという砂粒が
つもって出来た町だったとして

もうあと何件かの民家を越えれば
夜の暗さのために線がぼやけて
そのせいで夜空を陸に打ち寄せてしまう
間違いの海岸がそこにあったとして


夜に青白い
スプリンターのバンが一台
僕が一つ
 が一人
砂粒が何粒も
波の音に舞っている
松林のさざめきに流されている
さまざまなものに風は当たって
はねるから
僕たちは砂は
弧を描いたり
不意に落ちたり昇ったりして
あたりをうろつくように
黒い海べに
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