ペーパーナイフ/シリ・カゲル
廃墟と化した地下通路に夕刻特有の緑色に褪せた光が射し込み少女の痩せた乳房に陰影をつける
かつてコインロッカーとして使われた金属の塊は今は小動物たちの手狭ながら居心地の良い墓場となっていて室内には乾燥した排泄物が転がり汗と膿の臭いが漂っていた
泥だらけの少女が消費しているのだそれらの打ち捨てられた小動物たちは
通路の奥から姿を現した真っ白なウサギはさすがに懐中時計を持っていたりはしなかったけれども少女がその手にしているペーパーナイフを差し込むには困難な速度で歩行していたので鏡の世界へなんとか逃げおおせた。
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