逃避/ねろ
きり
うごかないでいる
僕が考えるのはキリンの睫毛について
それはきっと彼女の胎内で育まれたもので
初めから睫毛があるわけではなく
それはキリンの形すら象ってはいないのだろう
僕はジャガイモを剥くかなり大きなものでも
剥いているうちに小さくなってしまう
僕は食事をするかなり沢山の人に取り囲まれながら
食は殺しであることに誰もを気付いていない振りをしている
僕は言葉をひたすら食うそして言葉を殺す
キリンの首には前ボタンが5つ住みついて
僕の首よりはかなり居心地が良いという
睫毛からは雨が降ってきていて
僕はひたすらキリンも食うそしてキリンを殺す
彼女は菜食主義で草食動物のふりをする
いつかキリンのお母さんになる夢をみながら
吐き出されたまま丸まってねむっている
交差点に立っている僕は信号の水色を気にしている
背中からは家出していったボタンが飛び跳ねながらついてくる
空ではあちらこちらで産み落とされる前のキリンの心音がしている
キリンは分離してあちらこちらに茶色い斑と黄色が散乱している
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